相続

相続に税理士は必要か?元税理士事務所スタッフが教える判断基準

この記事の内容
  • 相続税の申告を税理士に依頼する目安
  • 自分で申告する場合のメリット・デメリット
  • 自分で申告する場合の注意点や流れ
  • 税理士に依頼する場合のメリット・デメリット

 

上記の内容を税務の実務に通算18年従事して相続税の申告・税務調査の立ち会いも経験した筆者がそのポイントを解説します。

この記事の執筆者

しょうじ
会計事務所に5回の転職で、5人の税理士のもとで通算18年勤務。そのうち3か所では、No.2として他スタッフの業務管理・指導、事務所のWEBサイト運営や集客にも従事。

相続税の申告があるけど、

  • 税理士に依頼するべきかどうか悩んでいる
  • ネット検索では税理士のホームページしかないのでポジショントークじゃない客観的な意見が聞きたい
  • 税理士に依頼する場合の客観的なメリット・デメリットを知りたい

と思うなら、最後までお読みください。

税理士に依頼するときの目安

相続税がかかるとなったら、どんな場合に税理士に依頼すべきか、その目安となるのは次の二つです。

  • 遺産が5,000万円以上
  • 遺産に土地がある

なぜ、これを目安にするのか、詳しく見ていきましょう。

遺産が5,000万円以上

相続税は超過累進課税なので、課税される遺産総額が大きくなるほどに税率が上がります。

【相続税の税率】

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
No.4155 相続税の税率

相続税の計算は、一旦は相続財産を法定相続人が取得したとして計算するので、法定相続人の数にもよりますが、課税される遺産総額が5,000万円を超えてくると、法定相続人あたりの課税価格も大きくなり、それに対応して税率も高くなるので、税額も多額になります。

遺産に土地がある

預金や上場株式などの評価は、専門知識がなくても評価することができますが、土地の評価は専門知識がないと難しいです。

土地は、その土地が面した道路に付された価格(路線価)に面積を乗じて評価します。そして、不整形地であればその分評価を減額できます。

その不整形地の評価が素人には難しいです。

自分で申告するメリット・デメリット

相続税の申告を自分でする場合のメリット・デメリットをまとめました。

自分で申告するメリット

自分で申告するメリットは、「税理士費用がかからない」ことです。

ただ、これ以外にメリットはあまりありません。相続税の申告は手間がかかりますし、所得税の申告などと違って、人生でそう何度もあることではないので手続きを知ったところで、活用できることはあまりありません。

自分で申告するデメリット

自分で申告するデメリットは主に次の5つです。

  • 相続税について調べる必要がある
  • 節税ノウハウなどがないため税額が多くなる
  • 間違いや漏れなどで税額が過少となり追徴課税の懸念
  • 税務調査のリスクが高くなる
  • 税務調査の対応が必要

相続税について調べる必要がある

相続税の申告をするとなると、最低限の相続税の知識は必要になります。少なくとも、

  • 相続税の計算の仕組み
  • 預貯金や株式、不動産などの財産の評価方法
  • 控除や特例などの税制メリット

といった知識は最低限必要で、一般的には、結構なボリュームの知識になります。

節税ノウハウなどがないため税額が多くなる

相続税には、知っているか知らないかで大きく差がつく控除や特例があります。代表的なものとしては、

  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地の特例

などありますが、事前に調べて申告書を作る際に選択しない限り、特例を使った方が得なことを税務署は教えてくれません。当然税制メリット上のものを使わなければ、相続税は高くなってしまいます。

配偶者の税額軽減
配偶者の取得した遺産額が、次のいずれか高い金額まで配偶者には相続税がかからないという制度です。
①1億6千万円
②配偶者の法定相続分相当額
No.4158 配偶者の税額の軽減
小規模宅地の特例
被相続人の居住用の宅地等で要件を満たすものについては、最大で80%評価を減額するという制度です。
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

間違いや漏れなどで税額が過少となり追徴課税の懸念

申告書に間違いがあって、納付した相続税が本来払うべき税額より少ない場合は、本来払うべき税金に加えて、過少申告加算税がかかります。つまりペナルティが発生するんですね。

相続税の申告でよくあるまちがいは、名義預金の申告漏れです。名義預金というのは、配偶者や子の名義の銀行口座に被相続人(亡くなった人)が生前お金を預け入れていた銀行の預金です。

名義預金は、名義は被相続人じゃありませんが、被相続人の財産を供与しているので、相続財産として申告が必要です。

「相続税を減らそう」と単に名義だけ変えても、相続財産から外れるわけじゃないので注意が必要です。

国税庁も下記のように代表的な例として公表しています。

誤りやすい事例⑥ 被相続人以外の名義の財産(預貯金)

税務調査のリスクが高くなる

相続税の申告では申告漏れが非常に多いです。下記は令和元事務年度の相続税の調査状況ですが、非違割合は85.3%もあります。

前述の名義預金などの申告漏れは代表的な例なので、税理士以外の人がつくった申告書には申告漏れや間違いがあることは税務署は百も承知です。調査官にもノルマがあるのでできるだけ税金をとれるところに調査に行くのは必然です。

国税庁:令和元事務年度における相続税の実地調査の状況

税務署は税務調査の行き先を選定するのに「相続税の申告書」をもとに判断します。
つまり、税理士以外の相続税の申告書は、まちがいが多いと認識されているので、確率は高くなります。

でも、どうやって、税理士か税理士以外の人が申告書を作ったか見分けるかと言うと、申告書をみれば一目瞭然です。

相続税の申告書1表の一番下の欄に税理士の署名押印欄があるので、税理士かそれ以外かはすぐ判別できるんですね。

税務調査の対応が必要

自分で相続税の申告をしたら、税務調査の立ち会いを税理士に依頼しなければ、自分で税務調査の対応することになります。

税務調査なんて、そんなに来ないでしょ?と思うかもしれませんが、意外に割合的には多いです。

国税庁の発表では、
平成30事務年度相続税の申告件数116,341件令和元年分相続税の申告事績の概要)でした。その翌年、令和元事務年度相続税の税務調査件数10,635件令和元事務年度における相続税の調査等の状況)となっています。

単純に申告した翌年に税務調査が来るわけではないので、単純比較はできませんが、申告件数と税務調査件数の割合で見ると、

税務調査の件数は、概ね申告件数の1割くらいに匹敵します。

相続税の税務調査の割合

けっこうな割合で税務調査が来ているのがわかると思います。
これは、国税庁が、いわゆる「富裕層」についての課税の強化を図っていることからも窺えます。

自分で申告する場合の注意点

自分で相続税の申告をする場合、まず次の3点を確認してください。

  • 相続税の申告義務
  • 申告・納期限の確認
  • 申告しなかった・遅れた場合のペナルティ

相続税の申告義務の有無

遺産があっても相続税がかかるのは、遺産の総額から基礎控除額を引いて残額がある場合です。

遺産の総額 - 基礎控除額 > 0

つまり、遺産の総額が基礎控除額以下なら相続税はかかりません。
相続税の基礎控除額は、次の算式になります。

相続税の基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、相続人が配偶者と子2人なら、法定相続人は3人になります。

この場合の基礎控除は、
3,000万円 + 600万円 ✕ 3人 = 4,800万円となります。

つまり、遺産総額が4,800万円以下なら、相続税はかかりません。

申告・納期限の確認

相続税の申告と納税の期限は、

被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内

になります。

例えば、被相続人が亡くなったのが1月6日だった場合、申告と納税の期限は11月6日になります。
No.4205 相続税の申告と納税

申告しなかった場合、遅れた場合のペナルティ

相続税の申告義務があるのに申告しなかった場合、無申告加算税が課せられます。
無申告加算税は、本税(本来納めるべき相続税)に、どの時点で申告書が提出されたかに応じて次の割合が加算されます。

本税の金額自主申告事前通知後税務調査後
50万円超5%15%20%
50万円まで5%10%15%

自分で申告する場合の流れ

相続税の申告をする場合、大まかには以下の流れで進めていきます。

  • 戸籍謄本等の取得、法定相続人の確定
  • 添付書類等必要書類の収集
  • 財産評価
  • 相続税の計算
  • 申告書・納付書の作成

戸籍謄本等の取得、法定相続人の確定

被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本の取得から相続税の申告の手続きは始まります。出生から亡くなるまでの戸籍をたどって、法定相続人が誰か確定させます。この手続きを間違うと全てやり直しになる最も重要な部分です。

添付書類等必要書類の収集

相続税の申告では、一般的には以下の添付書類が必要です。早い段階で用意することをおすすめします。

被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本(相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの)
遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)

国税庁:相続税の申告の際に提出していただく主な書類

その他、相続財産に不動産がある場合は「固定資産名寄帳」(被相続人の所有する不動産の一覧表)を取得すると、不動産の申告漏れ防止に役立ちます。

財産評価

相続税がかかる財産は以下のとおり、一般的になじみのある[本来の相続財産]と、被相続人が既に取得していたわけではないけど、相続財産とみなされるものがあります。

財産の評価は財産の種類ごとに、財産評価基本通達に従って評価します。

本来の相続財産現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋、貸付金、特許権、著作権など。金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのものをいいます。
みなし相続財産死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金など。

No.4105 相続税がかかる財産

相続税の計算

財産評価ができたら、相続税を計算します。

相続税は、遺産総額を一旦、法定相続分で遺産分割したと仮定して相続税の総額を算出し、その税額を実際に分割した割合で按分して各人の相続税を求めます。

例えば、相続人が配偶者と子2人で、各自が1/3ずつ相続財産を分割した場合、
法定相続分は配偶者が1/2、子は2人なので、1/2×1/2で1/4になります。この法定相続分に応じて、一旦相続税を算出します。

一旦、算出した相続税を合算し、それを実際の分割の割合1/3ずつ按分して、各自の相続税を求めます。

申告書・納付書の作成

相続税の申告書は、3段階で分けて記入するとわかりやすいです。

  • 各財産と評価額の記入
  • 相続税総額の計算と記入
  • 各人の控除額と負担する相続税の記入
各財産と評価額の記入
第9表から第15表までで該当する部分に内容と評価額を記入します。
・第9表:生命保険金などの明細書、
・第10表:退職手当金などの明細書、
・第11表:相続税がかかる財産の明細書、
・第12表:農地等の明細書、
・第13表:債務及び葬式費用の明細書、
・第14表:純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額等の明細書、
・第15表:相続財産の種類別価額表
相続税総額の計算と記入
第1表から第3表で、相続税の総額を計算します。
・第1表:相続税の申告書
・第2表:相続税の総額の計算書
・第3表:財産を取得した人のうちに農業相続人がいる場合の各人の算出税額の計算書
各人の控除額と負担する相続税の記入
最後に適用できる控除などを差引して各人の相続税額を算出します。
・第4表:相続税額の加算金額の計算書
・第5表:配偶者の税額軽減額の計算書
・第6表:未成年者控除額・障害者控除額の計算書
・第7表:相次相続控除額の計算書
・第8表:外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書

申告書が作成できたら、添付書類とともに所轄税務署に提出して、申告書に記載した相続税額を納付書に記入して、税務署又は金融機関で納付します。

税理士に依頼するメリット

相続税の申告を税理士に依頼すると、具体的には、次のようなメリットがあります。

  • 相続税の納税額を最小限にできる
  • 申告書の間違いがないので追徴課税の心配がない
  • 税務調査のリスクが減る

相続税の納税額を最小限にできる

また、相続では、二次相続があることを想定してプランニングしないと、実質的な節税はできません。

前述した特例も踏まえたうえで、誰がどの財産を取得すると税額が最小になるかの判断は専門的知識がないと厳しいです。

このあたりで、税理士に依頼するかしないかでは、税額に大きく開きが出ます。税理士費用をケチって気づかず多額の納税をしてしまうことは十分あり得ます。

申告書の間違いがないので追徴課税の心配がない

一般的に相続税の申告を常時、業務としている税理士なら申告内容で間違うことはほぼありません。

そのため、追徴課税の心配もありません。

税務調査のリスクが減る

税務署は申告書を見て、調査先を選別しています。

税務署側からすれば、限られた人員で調査をする以上、1回の調査でできるだけ税額を徴収することを目指します。

つまり、

  • より税額が多いところ
  • より間違いが多いところ

を優先することになります。

この「より間違いが多いところ」という点で、専門家の作成するものと、一般の人が作成するものでは違いが明確になります。

そのうえ、
税理士は、常に税務調査を想定して申告書を作成します。

結果的に税務調査のリスクを低減させることにつながります。

税理士に依頼するデメリット

税理士に相続税の申告を依頼するデメリットは、これです。

税理士費用がかかる

税理士費用は相続の場合、高くなりがちなうえに、一般的に価格が不明瞭です。ここが最大のデメリットです。

税理士費用がかかる以外には、相続税の申告を税理士に依頼するデメリットはありません。

では、税理士費用はどんな仕組みで、どれくらいの相場か?というと、

相続税の税理士費用の体系は、基本報酬に手間を要する分を加算する方式が多いです。

税理士費用の体系

基本報酬 + 相続人の数 や 財産の評価品目分を加算する

手間を要する評価とは、土地の評価や非上場株式の評価です。預貯金や上場株などのように評価額が明確なものは、数が多くても別途加算することはあまりありません。

具体的には、基本報酬は、相続財産全体の金額の〇%を基本報酬として、

  • 相続人が1人増えると、基本報酬の〇%を加算
  • 評価に手間を要する財産が1つ増えるごとに〇円加算

といった感じです。

相場としては、以下のようになります。

タイトルタイトル
基本報酬相続財産の0.5%~1%
相続人加算相続人1人追加につき基本報酬の10%加算
土地の評価加算土地1利用区分につき5~10万円加算
非上場株の評価加算非上場株1銘柄につき10~20万円加算

例えば、1億円の相続財産があれば、基本報酬で50万円~100万円となります。

「けっこう高いな」と感じるかもしれませんね。

この税理士費用、じつは安くする方法があります。それは、

3人以上の税理士を比較検討すること、つまり相見積もりです。

相見積もりをするといっても、自分でインターネットで検索して比較検討するのはおすすめできません。

その理由は、

インターネットでは、相続に強い税理士かどうかがわからないからです。

なぜ、相続に強い税理士でなければならないのか?その探し方や税理士選びのポイントについてはこちらの記事でくわしく解説しています。

相続に強い税理士の選び方、ポイントは相続専門の税理士を3人以上比較する

相続に強い税理士の選び方、ポイントは相続専門の税理士を3人以上比較する

まとめ

相続税がかかるとなったら、どんな場合に税理士に依頼すべきか、その目安となるのは次の二つです。

  • 遺産が5,000万円以上
  • 遺産に土地がある

相続税の申告は、自分でできないことはありませんが、以下のデメリットに留意しましょう。

  • 相続税について調べる必要がある
  • 節税ノウハウなどがないため税額が多くなる
  • 間違いや漏れなどで税額が過少となり追徴課税の懸念
  • 税務調査のリスクが高くなる
  • 税務調査の対応が必要

以上のことと税理士費用を総合的に勘案しましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

  • この記事を書いた人

しょうじ

会計事務所に5回の転職で、5人の税理士のもとで通算18年勤務。そのうち3か所では、No.2として他スタッフの業務管理・指導、事務所のWEBサイト運営や集客にも従事。

-相続