- 税理士を変更するメリット・デメリット
- 税理士変更の時期と解約のタイミング
- 税理士変更での税理士の選び方
- 税理士変更の流れや注意点
上記の内容を法人・個人の税務申告、税務調査の立ち会いなど通算18年税務の実務に従事した筆者がそのポイントを解説します。
この記事の執筆者

しょうじ
会計事務所に5回の転職で、5人の税理士のもとで通算18年勤務。そのうち3か所では、No.2として他スタッフの業務管理・指導、事務所のWEBサイト運営や集客にも従事。
税理士を変更したいけど、
- 税理士を変更したいけどこんな理由で変更していいの?
- 税理士を変更するメリット・デメリットを知りたい
- 税理士を変更する時の流れや注意点は?
- 税理士変更で税務調査が来るか不安
とお悩みなら、
税理士変更へのリスクや不安が解消され、いい税理士との出会いの最初の一歩が踏み出せますので、ぜひ最後までお読みください。
税理士を変更する理由

この記事を読んでいるということは、あなたは何かしら税理士に不満があり税理士変更を考えているのだと思います。
税理士契約はあまり変更するものじゃないと思われがちで、一般的に、そうちょくちょく変更はしません。
とはいえ、人間関係なのでうまくいかないこともあります。そんな場合はストレスを抱えずに変更した方が得策です。
じつは、税理士・会計事務所向けに税務会計ソフトを提供するミロク情報サービスがアンケートした結果によると
事業者のうち約3割は税理士の解約を経験しています。

つまり、税理士変更は全然、特別じゃないってことなんですね。
税理士を変更するときはどんな理由なのかというと、、、
- 第1位 コミュニケーションがとれないなど 46.7%
- 第2位 税務署・トラブル対応 15.6%
- 第3位 対応・連絡の遅さ 13.3%
- 第3位 アドバイス不足など 13.3%
やはり、人間的なつながりなのでコミュニケーションがうまくいかないことが起因しているようです。
税理士契約の解約理由はこちらの記事でくわしく紹介しています。
税理士への不満ランキング、事業主の約3割が経験した税理士の解約理由とは?
税理士を変更するメリット

税理士を変更するメリットは、
現状の税理士に不満をもったストレスのある状況から大きく転換できることにあります。
前述のミロク情報サービスのアンケートによれば、税理士との契約が長く継続している理由の上位3位は、
- 1位 基本業務の丁寧さ 44.9%
- 2位 人柄や人物 41.6%
- 3位 料金の安さ 27.8%
となっています。

1位の「基本業務の丁寧さ」と2位の「人柄や人物」がともに40%を超えているので、多くの税理士が、節税支援や決算対策などの基本業務が丁寧で、人柄や人物の良さを併せ持っていることがうかがえます。
つまり、税理士変更することで、丁寧な対応をする人柄も申し分ない税理士に出会える可能性があり、現状のストレスから大きく転換できるのが最大のメリットです。
税理士を変更するデメリット

税理士を変更するデメリットとしては、
- 既存の税理士を断ることへの労力
- 新しい税理士との関係を築く時間と手間
があげられます。
既存の税理士を断ることへの労力
どんなに今の税理士に不満があるとはいえ、「断る」ことにはストレスを感じるものです。
また、「断り」の申し出をしてもそこで、スパッと終了とならないことが多いです。契約上の取り決めがなどで場合によっては時間がかかったり、書類のやり取りなどもあります。そのため、それなりに労力を要します。
新しい税理士との関係を築く時間と手間
新しい税理士は、あなたの事業の状況をまだ詳しく知りません。税務や会計の処理をするうえでは、事業のこと、取引のことをヒアリングする必要があります。
どんな書類があるか、事業の概況はどうなっているかを一つずつ、つぶさに説明するのは、時間も要しますし、手間でもあります。
税理士変更の時期と解約のタイミング

税理士変更で大事なのは、時期と解約のタイミングです。
ここでの時期と解約のタイミングというのは、、、
- 時期は会社の決算後の時期
- 決算日後3ヶ月以降でできるだけ早いほうがベストです。
- 解約のタイミングは次の税理士が決まってから
- 税理士を変更する際、既存の税理士契約を解約したあとに次の税理士を探しがちですが、それはおすすめしません。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
時期は会社の決算後の時期
法人だと、決算日後2ヶ月以内に税務申告があります。個人事業であれば、決算日後およそ3ヶ月(確定申告期限:翌年の3月15日)で確定申告があります。
決算前後で税理士変更して、決算が遅れると、
税務申告書の提出、税金の納付まで影響しペナルティを受けるリスクが高まるので避けるべきです。
新しく関与する税理士としては、会社のことをよく知らないので、決算まで、できるだけ期間があった方がよいです。

その間に、事業の状況、財務状況、経理の状況などを把握でき、税務会計処理によるミスを減らすことができるからなんですね。
なので決算日後3ヶ月以降でできるだけ早いほうがベストです。
解約のタイミングは次の税理士が決まってから
次の税理士が決まらずに税理士契約を解約してしまうと、
- 決算を迎えた場合、決算が組めず税務申告・納税が遅れる
- 税務調査が来た場合、立ち会い税理士なしの対応になってしまう
というリスクがあります。
ですから、既存の税理士との契約を解約するときは、次の税理士が決まってからにしましょう。
税理士変更での税理士の選び方

税理士変更では、次の税理士を早く決めることが重要になってきます。
とはいえ、焦って失敗しては元も子もありません。
そこで、税理士の選び方で失敗しないためにはポイントをお教えします。

実務で多くの税理士に携わってきた私の業界経験者視点での重要ポイントは以下3つです。
- 仕事の対応が丁寧か
- スキルよりも人柄を重視する
- あなたとの相性がいいか
この3つのポイントをもう少し深掘りします。
税理士選びの3つのポイント
仕事の対応が丁寧か
まだ仕事の依頼をしていないのに、仕事の丁寧さなんて確認できないですよね。
じつは、仕事を依頼しなくても面談で確認できます。それは、最初の面談で、あなたの事業のことを調べてくるかどうかで判断します。
仕事が丁寧な人は事前準備は怠りません。ですから、始めての面談では、予備知識や何かしらの準備はしてくるものです。
逆に何の準備もないようだと、仕事も行き当たりばったりの可能性があります。
スキルよりも人柄を重視する
一般的な法人税や所得税の税務ではスキルがそれほど高くなくても支障はありません。スキルよりも重要視すべきは人柄です。
- 誠実な対応をする
- 間違いはきちんと認める
- 時間を厳守する
といったことは最初に面談して話してみれば、概ねわかるので、スキル重視ではなく、人柄をキチンと見ましょう。
あなたとの相性がいいか
税理士との顧問契約は長く続きます。そのうえでは相性も大事です。
- 真面目な人だけど堅すぎるな
- 仕事はできるけどギラギラしたところが苦手
- 対応は早いけど、人間的に冷たい
など、仕事自体に問題なさそうでも相性が悪いこともあります。相性と言えど信頼関係を構築するうえでは大事な要素なので、判断の一つの基準に持っておきましょう。
3つのポイントの判断方法
上記の3つをどう判断するかというと、少なくとも3人以上の税理士と面談したうえで決めましょう。
3人と面談することで、どの水準が平均的なものかの判断がつき、比較検討ができます。
税理士選びでは、多くの人が複数の税理士に会って比較検討することをしません。業界的にこれまでは、知人の紹介などが税理士との接点であることが多かったことも理由の一つかもしれません。
複数の税理士に会って、比較検討しないと
税理士のスキルが判断できない
税理士費用が言い値になる
といったデメリットがあります。
ポイント
税理士選びは、3人程度の税理士と面談の上比較検討して決める。
税理士変更の流れ

税理士を変更する流れは、
- 税理士の変更時期の決定
- 次の税理士を探す
- 次の税理士に渡す書類を用意する
- 既存税理士との契約を解約
という流れになります。それでは、くわしく見ていきましょう。
税理士の変更時期の決定
税理士の変更時期を決定します。その際大事なのは、
- 既存の税理士契約の確認
- 新旧の税理士の変更日の設定
の2つです。
既存の税理士契約の確認
税理士と顧問契約する場合、顧問料も月額なので、大半は月単位の契約になっていると思います。
ところが、中には事業年度単位の契約で、報酬の支払いが月額で区切っているものもあります。つまり、事業年度が終わって税務申告までは契約が継続するという場合です。
ですから、既存の契約がどうなっているかは事前に確認しておきましょう。
新旧の税理士の変更日の設定
変更日をきっちり日付で設定するのは重要です。
例えば、消費税には、「簡易課税制度」という制度があります。簡単にいうと、小規模事業者は簡易な計算方式で消費税の申告書を作成できるという制度です。(制度の詳しい説明は割愛します。)
この制度の届出期限は、「制度を適用したい事業年度の開始の日の前日」です。
事前届出制なので、忘れると取り返しがつきません。
税務上は、この手の制約がけっこうあるので、とくに税理士変更では、既存の税理士と新しい税理士との間で責任の所在をはっきりしないとトラブルのもとになります。

次の税理士を探す
既存税理士との解約より先に次の税理士を探すのは、
上述したように、
- 決算が組めず税務申告・納税が遅れる
- 税務調査が来た場合、立ち会い税理士なしの対応になってしまう
というリスクを避けるためでもありますが、もう一つ理由があります。
それは、次の税理士に渡す書類です。
税理士に一般的に渡す書類は、後述しますが、一般的にわかりにくいものや、税理士によって「○○の届出も見たい」という場合もあります。
基本的に税理士変更で税理士同士の引継ぎはしませんが、書類は大事です。新しい税理士にとっては過去の申告書や決算書をみれば、大体のことはわかります。
それゆえ、引継ぎは必要ないのですが、書類がないとかなり困ります。
既存税理士と解約していれば、あとから書類の問い合わせをするのもストレスですよね。

ところが解約前であれば、必要書類がない場合でも、入手することが可能です。
これが、既存税理士との解約前に次の税理士を探しておく理由です。
なお、次の税理士を探すうえでは、税理士紹介サイトを利用するのがおすすめです。
税理士紹介サイトをつかった税理士の探し方は以下の記事でくわしく解説しています。
税理士の探し方でよくある失敗例4選
次の税理士に渡す書類を用意する
一般的に次の税理士に必要な書類は以下の通りです。
税理士変更で用意する書類
- 3期分の確定申告書(法人・個人)の控え
- 3期分の決算書・勘定科目内訳明細書
- 3期分の総勘定元帳
- 税務署に提出した各種届出書の控え
税理士によっては、他に届出関係も必要なこともあるので、ない場合は既存の税理士に確認してみましょう。
既存税理士との契約を解約
今の税理士に不満があっても、ストレートに伝えるのはおすすめしません。
誹謗中傷と受け取られて、ケンカ別れしても何もいいことはないからです。
じゃあ、どんな風に断るのかというと、、、
じつは業界では鉄板の断り方が存在します。。
それは、この3パターンです。
断り方鉄板の3パターン
- 友人が税理士として独立して、以前から顧問税理士にする約束をしていた。
- 甥や姪が税理士になり顧問税理士にするよう頼まれた。
- 取引先との提携で、取引先指定の税理士との契約を求められた。
この断り方3つの大きな特徴は、どれも、あなたにも税理士にも非がない。「しょうがない」という理由が成り立つことです。
詳細はこちらの記事で解説しています。
税理士変更の引継ぎ

税理士変更では、書類や電子申告を含めた引継ぎが疑問になるところですよね。じつは、それほど引継ぎは気にしなくて良いです。
税理士変更では、引継ぎとか必要なの?
実務上は「引継ぎはしません」。過去の申告書、決算書の書類がそろえば、基本的には大丈夫です。
税理士は税務会計のプロなので、過去に税務署に提出した申告書・決算書をみれば、その会社の税務・財務の状況は大体わかります。
なので、実務上は、以前の税理士と新しい税理士とで引継ぎはしません。
新しく顧問になる税理士からすれば、
あなたから事業・経理状況の概況と用意すべき書類を提示してもらえば対応できます。用意すべき書類は以下のものです。
税理士変更で電子申告はどうなるの?面倒な手続きが必要なの?
電子申告については、特別に手続きは必要ないです。
税務申告を税理士に頼むと、税理士は代理署名して、電子申告をします。
この際、納税者の情報で必要なのは、
「利用者識別番号(16桁)」と「暗証番号」です。
利用者識別番号は、再取得ができます。
税理士変更した場合、税理士同士が連絡して引き継がなくても、新しい税理士が利用者識別番号を再取得して、電子申告することは可能です。
実務上は、どうしているのか?というと、
一般的には、利用者識別番号を再取得して電子申告します。
というのも、
利用者識別番号は再取得すると、以前の利用者識別番号は使えなくなります。
税理士は守秘義務があるとはいえ、以前の税理士に申告内容などがわかるのもあまりいい気はしませんよね。
そこで、利用者識別番号を再取得すれば、そんな不安も払しょくされます。

税理士変更と税務調査

「税理士変更すると税務調査が来る」という噂がありますが、それは全くのデマです。
そのデマの根拠は、おそらく、
税理士が変わったことで会計方針が変わり、決算書上の数値の変動があったことだと推測できます。
税務署は税務調査に行く際、どの会社に行くかを選定します。その指標の一つとして粗利率の変動があります。
粗利とは売上から売上に直接係る原価を引いた利益です。
物販の会社などでいうと、売上から仕入を引いた金額をいいます。
なぜ、粗利の変動に税務署が注目するかというと、、
売上を隠している可能性があるからです。
ポイント
売上を隠す人は、売上だけを隠して仕入れを隠すことはあまりありません。つまり、売上だけを隠して、仕入れを隠さないと、前期と当期を比べた場合や、同業他社と比較して、粗利率が大きく変動してしまうんですね。
例えば、前の税理士は原価を仕入高だけにしていたのに、次の税理士が仕入に係る送料も仕入に含めるべきとして、原価項目に参入すると、粗利は大きく変動します。

税務署は、税理士変更で「会計方針が変わった」ことまで把握していないです。
なので、粗利率が大きく変動すると「調査対象に選定される」ことはあります。
こんな感じで、税理士変更後に
税理士による会計方針変更で粗利率が大きく変動
▼
税務調査の対象になって税務調査が来る
という結果になったのを税理士変更で税務調査が来たと認識されていることが原因ではないかと推測できます。
税理士変更による税務調査についてはコチラの記事でくわしく解説しています。
税理士変更でのその他の疑問と注意点
税理士変更では、他にも以下のような悩みや疑問が少なくありません。
- 税理士が解約を拒んだらどうすればいいの?
- 前の税理士から財務内容などを公言されたくない
- 税理士変更は銀行からはどんな目で見られるの?
それぞれ、実際はどうなのか?対処法はどうするのか?深掘りしてみます。
税理士が解約を拒んだらどうすればいいの?
税理士の中には、解約を拒む人もいます。それは、あなたが「優良顧客」である証です。
とはいえ、解約したいのにできないのは困りますよね。
基本的には、両者で合意できるように話し合いをすることが前提ですが、それでも前進しない場合、税理士会に相談してみるのも一つの施策です。

税理士は税理士会に登録して業務を行います。税理士会とは税理士が業務を行うために指導・監督する団体です。
税理士会は、管轄区域が分かれています。各地域ごとの税理士会は下記からご覧ください。
全国の税理士会、関連団体

前の税理士から財務内容などを公言されたくない
税理士には、守秘義務があり、税理士法で下記のように定められています。
(秘密を守る義務)
第三十八条 税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない。税理士でなくなつた後においても、また同様とする。
税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)
もし、守秘義務違反があった場合には、罰則として二年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科せられます。
第八章 罰則
第五十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 税理士となる資格を有しない者で、日本税理士会連合会に対し、その資格につき虚偽の申請をして税理士名簿に登録させたもの
二 第三十七条の二(第四十八条の十六において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
三 第三十八条(第五十条第二項において準用する場合を含む。)又は第五十四条の規定に違反した者
四 第五十二条の規定に違反した者
業界的にも、職務上の守秘義務についてはかなり遵守されていますので、軽々しく情報を漏洩する心配はないと考えて良いと思います。
税理士変更は銀行からはどんな目で見られるの?
税理士を変更すると、
- 粉飾決算を以前の顧問税理士に拒まれて税理士変更したんじゃないか
- 脱税まがいのことがあって税理士変更になったんじゃないか
という目で銀行から見られるのでは?
という悩みをよく聞きます。
結論から言うと、税理士を変更することで銀行からの見る目は全く変わりません。
税理士の対応がマズくて税理士変更になるケースは多々あるし、財務状況が悪くなければ、銀行は税理士が変更になったことを勘ぐったりしないのでご安心ください。
まとめ
税理士を変更する際は、以下の2点を注意しましょう。
- 時期は会社の決算後の時期
- 解約のタイミングは次の税理士が決まってから
また、次の税理士を選ぶ際には、
- 仕事の対応が丁寧か
- スキルよりも人柄を重視する
- あなたとの相性がいいか
という3点を注視して、3人以上の税理士と面談のうえ、比較検討して判断しましょう。
税理士を探す場合には、税理士紹介サイトをつかって効率よく探すことをおすすめします。
税理士紹介サイトをつかった税理士の探し方は以下の記事でくわしく解説しています。
税理士の探し方でよくある失敗例4選
最後までお読みいただきありがとうございました。